『生涯付き合える、定番の腕時計がほしい』
こんな風に思ったことはありませんか?
生涯付き合える定番品の共通点は、流行に左右されないこと。つまり深い歴史と豊富な物語を有していることです。
この記事を読めば【生涯にわたって付き合える、大定番の腕時計12本】を知ることができます。
初めて時計を買おうとしている方。時計選びで失敗したくない方に特におすすめです!
目次
生涯付き合える大定番の腕時計の特徴とは?
✔深い歴史と豊富なストーリーがある
✔一貫性のあるデザインと哲学がある
✔ある程度の耐久性と使い勝手の良さがある
そもそも流行に左右されない、定番と言われる時計の特徴は何なのか?私なりに考えてみました。
まず第一に「深い歴史と豊富なストーリーがある」です。
男性用腕時計が誕生してから100年以上。ここ数年~数十年で誕生したブランドやモデルでは、いくら人気があっても、まだ定番とは言えないと思います。
定番になるには、長い年月をかけて信頼と評価を得ることが必要だと思います。
そして、長い年月人々に愛されてきた時計には、自然と豊富なストーリーが宿ります。
第二に「一貫性のあるデザインと哲学がある」です。
いくら長い歴史があっても、モデルチェンジをするたびにデザインが変わったり、方向性が変わってしまうようでは、定番にはなれないでしょう。
長い年月、一貫性のあるデザインと哲学を貫くことで、一目で認知される”アイコニック”な時計へと昇華されていくと思います。
車でもそうですよね。ポルシェ911やベンツのゲレンデ、ロールスロイスのゴーストなどは、いつの時代も変わらないデザインと哲学があります。
第三に「ある程度の耐久性と使い勝手の良さがある」です。
時計はやはり、着用してなんぼ。日々の生活に使われて真価を発揮するものです。
いくら深い歴史と一貫性のある製品だったとしても、使われなければ意味がありません。
日常的に使われるには、ある程度の耐久性と使い勝手の良さが必要です。
大定番の腕時計12選
ここからは、私の考える流行に左右されない大定番の腕時計12選をお送り致します。
1: オーデマ・ピゲ「ロイヤルオーク」
✔歴史的意義とストーリー性の高さ
✔ステンレスとは思えない圧倒的な輝きと存在感
✔高い資産価値
一本目は、世界三大時計ブランドの一角オーデマ・ピゲから、「ロイヤルオーク」を挙げたいと思います。
現在、ラグジュアリースポーツウォッチが世界的に人気を博していますが、1972年に発表されたロイヤルオークこそが、ラグスポの原点です。
発売から現在まで50年弱経っていますが、初代と現代ではほとんどデザインの変更がありません。初めから完成されたデザインであり、タイムレスな時計です。
「ロイヤルオーク」という名前は、ジェラルド・ジェンタが着想を得たという英国駆逐艦ロイヤルオークの舷窓から来ています。
また、その独特の研磨と仕上げで、ステンレススチールとは思えないほど煌びやかに輝きます。
歴史的意義、資産価値、ステータス性、質感、デザイン、汎用性などあらゆる面で最高レベルにバランスが取れている時計はごくわずかだと思います。
ラグジュアリースポーツウォッチの選び方やおすすめベスト10を知りたい方におすすめ→万能な高級時計が欲しい人へ!ラグスポ時計の選び方とおすすめ10選
2: ロレックス「サブマリーナ」
✔歴史的意義と豊富なストーリー性
✔圧倒的な精度と耐久性
✔高い品質と資産価値
二本目は、ロレックスの「サブマリーナー」です。
やはりダイバーズウォッチのアイコンであり、原点にして頂点と言えると思います。
1953年の初登場から、デザインはほぼ変わらず現在まで続いていおり、まさに永世定番と言えるでしょう。世界中の男たちの憧れジェームズ・ボンドの時計としても有名です。
ロレックスの厳しい自社規格を通している為、精度はクロノメーター以上で、日差は驚異の+/-2秒以内。
さらに、使用しているステンレス素材は904Lというもので、傷や錆に非常に強い特別なステンレスです。
資産価値も高く、中古品でさえ、新品よりも高値で売られています。
私は2016年に運よく正規店で購入することができました。当時の様子の記事はコチラ→正規店で購入!ロレックス サブマリーナを最初の腕時計に選んだ理由
歴史・ステータス・精度・頑丈さ・サイズ感・扱いやすさ・資産価値など、全ての項目で高得点を出せる時計は極めて稀な存在です。
サブマリーナーはまさしく、そのど真ん中を行く時計であり、今後もそれが崩れることはないでしょう。
サブマリーナのレビュー記事はコチラ→ロレックス サブマリーナの評価は?3年間使った僕が徹底レビュー!
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3: オメガ「スピードマスター」
✔人類史上最も偉大な挑戦を成し遂げたストーリー
✔プロフェッショナルなスペック
✔豊富な種類と比較的求めやすい価格帯
三本目は、「ムーンウォッチ」の異名を持つ、オメガ「スピードマスター」です。
スピードマスターは1957年に誕生しました。その名の通り、元々モータースポーツでの使用を目的として開発された時計です。
ところが、今日では「月面に降り立った時計: ムーンウォッチ」としてその名を馳せています。その経緯を少し紹介したいと思います。
時は1960年代、ロシアとアメリカは宇宙開発を競い合っていた時代。アメリカのNASAは、宇宙での使用に耐えうる時計を探していました。
様々なブランドの一般販売品を買って来て、あらゆる試験を行った結果、唯一宇宙での活動に耐えられると合格したのがスピードマスターでした。
それからスピードマスターは、NASAの公式装備品となり、1969年の月面着陸という人類初の偉業達成の一員となったのです。
これにより、スピードマスターはムーンウォッチと呼ばれるようになりました。ここまでは割と有名な話です。
しかし、スピードマスターの本当の真価は、この翌年の1970年、アポロ13号で発揮されることになります。
アポロ13号はもともといわく付きでした。13はキリスト教圏では、不吉な数字とされているうえに、発射時刻も13時13分だったのです。
アポロ13は月面着陸を目指していたものの、発射から2日後、電線のショートから起きた火花によって爆発事故が発生します。
そのためアポロ13は、深刻な水・電力不足に陥り、月面着陸をあきらめ、目標を地球への生還としました。
しかし電力を最小限に抑える為、ほとんどの計器が使えない状況です。
それでも何とか月を周回し、地球に向かう頃になると、今度はアポロ13の軌道がそれている事が発覚します。
地上管制の計算の結果、軌道を地球上へ戻すには、月面着陸用船のエンジンをぴったり14秒噴射しなければならないことが分かりました。
しかし、宇宙船の計器は使えません。彼らの腕に巻かれたスピードマスターを除いては。
彼らはスピードマスターのクロノグラフ機能(ストップウォッチ機能)を用いて、14秒ぴったりエンジンを噴射。そして、無事地球に帰還しました。
この華麗な帰還劇は、「最も成功した失敗(Successful failure)」「偉大な失敗」と呼ばれ、今でも語り継がれています。
そしてその立役者となったオメガには、乗組員の命を守ったとして、NASAからシルバー・スヌーピー賞が贈られたのでした。
宇宙に行った時計については、コチラで紹介しています→宇宙好き必見!あの宇宙飛行士を支えた腕時計とその物語 5選
4: ブライトリング「ナビタイマー」
✔唯一無二の機能「フライトコンピューター」
✔クロノメーター級の精度
✔アイコニックで完成されたデザイン
四本目は、ブライトリング「ナビタイマー」です。
他の時計にはない独自の「フライトコンピューター」が搭載されているのが特徴です。また、しっかりとした歴史的背景があってタイムレスな時計です。
ナビタイマーは、1952年に回転尺付きのクロノグラフとして、アメリカ海軍大佐に考案されました。
パイロットはこれを使って、単位換算や飛行速度や高度、燃料残数などが様々な計算できます。
ナビタイマーは瞬く間にパイロットたちのお気に入りとなり、ブライトリングはアメリカパイロット協会の公式時計として採用されました。
ナビタイマーのすごい所は、文字盤の緻密なプリント技術です。印刷技術のあまり発展していない1952年当時から、正確な文字盤を作っていたと言います。
さらに驚くべきはデザインのバランスです。これだけ細かく複雑な目盛りと数字の羅列でも、しっかりとした視認性を備えており、デザインも破綻していません。
それどころか、どこをいじっても崩れてしまいそうな、この機能的な完璧なバランスは実に見事です。これからも永遠にこのデザインは変わらないでしょう。
ブライトリングは1999年以降、100%クロノメーター化を宣言しており精度も非常に高くて安心です。
ダイバーズウォッチのアイコンが「サブマリーナ」なら、パイロットウォッチのアイコンは「ナビタイマー」だと私は思います。
パイロットウォッチの選び方やおすすめベスト10を知りたい方におすすめ→いい大人の休日時計!パイロットウォッチの選び方とおすすめ10選
5: ジャガールクルト「レベルソ」
✔長い歴史と不変でアイコニックなデザイン
✔反転機能とその誕生ストーリー
✔クラシカルで知的かつ玄人な雰囲気
五本目は、ジャガールクルトの「レベルソ」です。
ジャガールクルトと言えば、1833年の創業以来、数々の発明や特許、1000種類以上のムーブメントを製造し、あの世界三大時計の全てにムーブメントを供給していた程の真のマニファクチュールです。
その技術力の高さと、良い意味で変態的な発想で、室内の気圧差だけで半永久的に動き続ける時計や、クオーツ時計のようにステップ運針する機械式時計など、他のメーカーには到底できない離れ業も持ち合わせています。
そんなジャガールクルトの中で、もっとも有名な時計が、この「レベルソ」です。
このレベルソは1931年、インド駐在中のイギリス将校から、ポロの競技中でもガラスが割れない時計が欲しいという依頼に応えて誕生しました。
当時のガラスの質は悪く、激しい衝撃があっては壊れてしまうものばかりでした。
そこで、ジャガールクルトはなんと、文字盤を反転させることを思いつき、この「レベルソ」を開発したのです。
四角い時計(レクタンギュラー)といえば、男性はこの「レベルソ」、女性はカルティエの「タンク」を思い浮かべる人が多いかと思います。
レベルソの見た目の一番の特徴は、直線を基調とした造形ですが、これは、”アール・デコ”と呼ばれる新しい芸術の特徴です。
“アール・デコは1925年のパリ「アール・デコ展」(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)を機に開花し、「世界で初めて世界を一周した芸術」などともいわれる、世界中を席巻した芸術です。
そしてそのアール・デコは、実はカルティエの創した様式であり、またアール・デコの主役はカルティエでした。レベルソが生まれたのは、1931年。
まさにカルティエの生み出したアールデコの影響を強く受けていたのだと思います。
出生はスポーツウォッチでありながら、その控えめなデザインと雰囲気から、現在では「ドレスウォッチ」として考えられることも多く、スーツとの相性はばっちりです。
ジャガールクルトという生真面目なブランドの性格や、四角い時計の雰囲気から、「クラシカルで知的、真面目な時計好き」という印象を持たれやすいと思います(私はそう思ってしまいます)。
クラシカルで歴史のあるもの、玄人感の強いものが好きという方におすすめの一本です。
6: パテック・フィリップ「カラトラバ」
✔時計界の頂点たるステータス性
✔丸型時計の模範であり不変の定番
✔圧倒的な薄さと着け心地の良さ
六本目は、全ての時計ブランドの頂点と言われる、パテックフィリップから「カラトラバ」を選びたいと思います。
カラトラバが誕生したのは1932年。
デザインは機能により決定されるという、ドイツのバウハウス哲学を反映して、時計学者によってデザインされました。
丸型時計の模範と評され、現代まで大きなデザイン変更は無く、永世定番として、世の紳士の憧れとなっています。
個人的にすごいなと思うのは、1900年代~1930年代前半の時計は、アール・デコの影響で、レクタンギュラーの時計(長方形の時計)の全盛期に、丸型の時計で傑作になっていることです。
今でこそ丸形の時計が主流ですが、当時は、カルティエのサントスやタンク、ジャガールクルトのレベルソやオメガのマリーンなど、レクタンギュラーの名作と言われる時計が数多く登場している時代です。
アール・デコの最盛期にあって、バウハウスという選択がすごいと思います。
私もいつかは…と憧れている時計で、実物を見に行った事があります(買える訳はありませんが汗)。
一見、至極シンプルなのですが、ただモノならぬオーラがひしひしと伝わってきました。
ちなみに、”カラトラバ”という名前は、1100年代に、外敵の襲撃から国を守ったスペイン騎士団の”カラトラバ十字”から来ており、パテックフィリップのロゴにもなっているほどで、由緒正しき出生があります。
パテックフィリップには、数々の名品がありますが、その中でも自社のブランドロゴの名前を冠するカラトラバこそ、同社の顔とも言えるでしょう。
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7: タグホイヤー「モナコ」
✔世界初のスクエア型の防水時計
✔スティーブ・マックイーンのストーリー
✔程よい抜け感とお洒落な雰囲気
七本目は、世界初の自動巻きクロノグラフを開発した一社であるタグホイヤーから「モナコ」を選びました。
「モナコ」はその名の通り、ヨーロッパ屈指の富豪国家のモナコ公国で開催されるF1グランプリをオマージュして1969年に誕生します。
モナコの凄いところは、世界初の自動巻きクロノグラフを搭載しただけでなく、世界初のスクエア型の防水時計であったことです。
スクエア型は、技術的に防水性を高めることが非常に難しかったのですが、ホイヤーはデザイン的な面白さを求めて開発に挑戦します。
その努力が実って、モナコは誕生しました。
しかし、力作であったにも関わらず、発売当初あまり売れなかったと言います。
モナコの発売された1969年には、スピードマスターが月に行き、ゼニスから「エルプリメロ」が開発され、セイコーから世界初のクォーツ腕時計が発売されるなど、ビッグイベントが続いたため、陰に隠れてしまったのかもしれません。
しかし、1971年、モナコに転機が訪れます。カーレース映画「栄光のル・マン」が公開されたのです。
この映画で、ハリウッドスターであった「スティーブ・マックイーン」がモナコを着用したことで、その知名度が飛躍的に上がることになりました。
ホイヤーはスティーブマックイーンとスポンサー契約を結んでいたわけではありません。スティーブマックイーン自身が、数ある時計の中からモナコを選んだと言います。
スティーブマックイーンが着用したモナコの特徴の一つに「左リューズ」というものがあります。
リューズは通常、右側にあるのですが、ドライバーがハンドルを手にしたときに、リューズが手に当たってしまうのを避けるために左側についていたと思われます。
しかし、スティーブマックイーンはこれを右腕に着けたため、「左リューズ」のモナコは左利き用と捉えられてしまうといった小話もあります。
このようにモナコは、技術的な革新のみならず、デザイン的な面白さもあり、ストーリー性も豊富です。
モナコはファッション大国のイタリアで特に人気が高いようです。ファッション業界で働く方であれば、スーツにモナコという組み合わせは、特に良いかもしれません。
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8: カルティエ「サントス」
✔世界で初めてのメンズ腕時計という歴史的意義
✔工具無しベルト交換によるTPOへの対応力の高さ
✔高貴なローマ数字とスポーティなケースのバランス
八本目は、メンズ腕時計の始まりとなった、カルティエの「サントス」です。
今日では、サントスはどちらかといえば、ドレスウォッチか3針スポーツウォッチに分類されそうですが、その出生はパイロットウォッチでした。
ブラジルのコーヒー王の息子であり、ヨーロッパの飛行家「サントス・デュモン」は1904年、友人に飛行中でも見やすい時計を開発して欲しいと依頼しました。
その友人こそが、三代目カルティエ頭首「ルイ・カルティエ」です。
カルティエは製作に取り掛かり、今日の時計の基礎となるデザインを考案し、その時計を「サントス」と名付けました。
この「サントス」こそが、「世界で初めてのパイロットウォッチ」であり、「世界で初めてのメンズ腕時計」なのです。
しかしサントスは、これ以降に生まれたパイロットウォッチとは趣が異なり、どこか高貴でドレッシーです。
それは、サントスが生まれた当時は、飛行機が戦闘の手段ではなく、富豪や冒険家のものであったこと、さらには人類の夢とロマンの対象であったからではないでしょうか。
ここから先は私の考察ですが、なぜルイ・カルティエは、あえて読みにくい「ローマ数字」を採用したのでしょうか?
1910年代に入ってから世界は第一次世界大戦に突入します。戦車などの大量破壊兵器が投入された初めての戦争でした。
飛行機も戦争に利用されましたが、このころの飛行機は性能が上がり、パイロットは一瞬の判断が求められたと思います。
その証拠に、1910年代以降のパイロット時計は大きく、見やすいアラビア文字が標準になっています。
しかし、サントスの頃の飛行機は戦闘兵器ではなく、冒険のためのもの、人類の夢を具現化したものでした。またパイロットは軍人ではなく、冒険家や富豪でした。
そして彼らの居場所は、戦場ではなく社交の場、フォーマルな場が主体であったはずです。
ルイ・カルティエもそのことは重々承知していたのでしょう。
だからこそ、フォーマルな場でも使えるようにと、最も高貴とされる「ローマ文字」を採用したのだと私は考えています。
事実、当時のサントスの写真には懐中時計用のチェーンが写っていません。おそらく、ディナーやパーティの時にも、腕時計をしていたのだと想像します。
9: ゼニス「エルプリメロ」
✔歴史的意義のある名機
✔古典的なムーブメントで時計愛好家からの人気も高い
✔ストーリー性の高さ
九本目は、クロノグラフの超名門ゼニスから「エルプリメロ」を選びました。
ゼニスは世界初の自動巻きクロノグラフを開発した一社でもあります。
ゼニスの自動巻きクロノグラフ「エルプリメロ」は、生きた化石と言えるほどに、古典的な構造をしているだけでなく、1秒間に10振動という最速のハイビートを刻むことがマニア心をくすぐっています。
いわば、クラシックレーシングカーのようなもので、今なお時計マニアから非常に人気を博しています。
あのロレックスのデイトナでさえも、かつてはエルプリメロのムーブメントを載せていたほどの名機です。
また、エルプリメロには面白い物語があるので、少し紹介します。
アメリカ資本に買収されたゼニスは、「これからはクォーツの時代だから、機械式の資料は全て破棄するように」と、オーナーから通達されました。
これは、ゼニスの渾身の力作である「エルプリメロ」も同じでした。
一人の時計技師がオーナー陣に「きっとまた機械式時計の時代が来るから、資料は残したい」と懇願しました。しかし、それは却下。全て破棄との命令が下されてしまいました。
時は流れ1980年代、機械式時計の良さが見直されるようになり、ゼニスも機械式時計を復活させたかったものの、機械式時計の資料は全く残っていませんでした。
困り果てていたところに、あの時計技師が、機械式時計の資料を持ってきました。
実は、オーナー陣に資料の破棄を命令された後、彼は独断でこっそりと資料を持ち帰り、屋根裏部屋に隠していたのでした。
これにより、ゼニスはエルプリメロの生産を再開する事ができ、今日でもクロノグラフの名門としての地位を維持しています。
そして彼の英断は、歴史的名機エルプリメロを守り、世界中の全時計ファンから英雄として認識されています。
このようにエルプリメロは歴史的意義やストーリー性が高く、また機械的機構もマニア心をくすぐる物があり、おすすめです。
10: IWC「マーク」シリーズ
✔無駄を削ぎ落したシンプルさ
✔高い耐磁性と視認性
✔フォーマルなスーツにもカジュアル服にも合わせられる守備範囲の広さ
十本目は、IWCの「マークシリーズ」を挙げたいと思います。
IWCは1930年代後半からイギリス空軍にパイロットウォッチを収めて来ました。その流れの中で、1948年に最初のマークシリーズである「マーク11」が誕生します。
当時の戦闘機は計器類やエンジンが強力な磁場を発生させており、耐磁性のある時計が求められていました。
IWCはこれに応えるべく、時計のムーブメントを磁気の影響を受けにくい軟鉄で覆い高い耐磁性を実現します。
1948年から現在までマーク11,12,15,16,17,18と続いてきており、若干のサイズやデザイン、スペック変更はあるものの、全ての世代で高い耐磁性と視認性、スマートでシンプルなデザインを貫いています。
またサイズは全ての世代で36~41mmと扱いやすいサイズで、厚みも抑えられており、無駄のない凛としてスタイリッシュなプロモーションを維持しています。
他のパイロットウォッチがたくさん機能を詰め込んで肥大化していくのを横目に、自らはストイックに磨きをかけ続ける。まさに“ファイター”としてのパイロットウォッチではないでしょうか。
スイスの中でも、珍しくドイツ語圏に位置するIWC。
まさに質実剛健という言葉がぴったりのメーカーで、多くを語らずとも、工業的精度の高さと品の良さが、腕からひしひしと伝わって来ること間違いありません。
11. パネライ「ルミノール」
✔ユニークな歴史とストーリー性
✔パネライならではの柔らかい雰囲気
✔一目でわかるアイコニックな見た目
十一本目は、パネライの「ルミノール」です。
ダイバーズウォッチを語るうえで、外す事ができないのがパネライです。
世に言うダイバーズウォッチが誕生したのは1953年ですが、実はそれ以前に、既に潜水で使われている時計が存在しました。それが、パネライの「ラジオミール」です。
パネライの歴史は特に面白いので、少し紹介したいと思います。
パネライは1860年にイタリアで時計店および時計学校として創業されました。
1936年、パネライはイタリア海軍の要請で特殊潜水部隊のための時計「ラジオミール」を開発します。
当時時計は戦果を左右するほどの重要物であり、ラジオミールは軍事機密事項としてイタリア海軍のみに納入をし続け、市場に出ることはありませんでした。
しかし、1990年代に冷戦が終わり、平和な時代が訪れると、徐々に軍需規模は縮小し、パネライはいよいよ民生品を作り始めます。しかし、知名度はゼロでした。
そんなあるとき、一人の映画俳優がパネライの時計を気に入り、オーダーしては知人に配ったりしていました。その俳優こそが、あのシルベスター・スタローンです。
そして、1997年、彼の配った時計がリシュモングループのお偉いさんの目に留まり、パネライは名門リシュモングループ入り。
翌1998年の国際展示会で鮮烈なデビューを果たし、2000年代のデカ厚時計ブームを巻き起こしました。
1860年の創業から140年間日の目を見ることがなかったパネライ。
それゆえに独自の形状、独自の技術で進化していき、それが日の目を浴びた瞬間に世界でブレイク、鮮烈のデビューという背景が個人的には好きです。
そんな個性的な歴史を持つパネライですが、ルミノールは1950年代に誕生したラジオミールから派生したモデル。
特徴的なリューズガードが付いて、特にアイコニックだと思います。
12. グランドセイコー「SBGA211」
✔圧倒的に輝く磨きこみと日本刀のような美しさ
✔セイコースタイルと呼ばれる光と影の表現
✔雪白文字盤とスプリングドライブという唯一無二の技術
グランドセイコーは、長年外国勢の独占だった高級時計市場の牙城を崩すために、1960年にセイコーから独立して歩みだした、日本のクラフトマンシップの結晶ともいえるブランドです。
グランドセイコーの時計は、針やインデックス、時計の本体や尾錠に至るまで磨きが凄まじく、室内の照明下でさえ、凛とした光を放ちます。
これをグランドセイコーは“光を研ぐ”と表現していますが、まさに言い得て妙です。
“研ぐ”という言葉から、私が真っ先に連想するのは日本刀ですが、まさに美術館に展示されている日本刀のようなオーラと輝きを放っています。
グランドセイコーは、「最高の普通を作る」という理念を掲げているのですが、この磨きこみと輝き方は普通ではありません。
普通、つまり基本を極めると、ここまで輝く美しい時計を作ることが出来るのかと感動さえしてしまいます。
これは、グランドセイコーが1967年に確立した「セイコースタイル」と呼ばれるデザイン言語によるものです。
“平面と二次曲面からなるデザインで、すべての部位で平面面積を極力多く取り、歪みなく鏡面のように磨き上げる”というものです。
そうすることによって、屏風や障子のように光と影のコントラストを生み、視認性を高めることに成功しています。
グランドセイコーの時計には、この「セイコースタイル」という哲学が息づいています。
また、この「SBGA211」は、他社には真似できない「スプリングドライブ」というクォーツ式時計と機械式時計のハイブリットムーブメントを搭載。
文字盤は、諏訪の山々に降り積もる新雪をイメージした雪白(スノーフレーク)が採用され、まさにグランドセイコーの顔とも呼べる一本になっています。
まとめ
✔オーデマ・ピゲ「ロイヤルオーク」
✔ロレックス「サブマリーナ」
✔オメガ「スピードマスター」
✔ブライトリング「ナビタイマー」
✔ジャガールクルト「レベルソ」
✔パテック・フィリップ「カラトラバ」
✔タグホイヤー「モナコ」
✔カルティエ「サントス」
✔ゼニス「エルプリメロ」
✔IWC「マークシリーズ」
✔パネライ「ルミノール」
✔グランドセイコー「SBGA211」
いかがだったでしょうか?
今回は、私の考える「生涯付き合える大定番の腕時計」を紹介してみました。
定番ということで、それぞれの歴史やストーリーなどを中心に書かせて頂きました。
時計好きにもフェチが色々いると思いますが、私は歴史やストーリーフェチなので、非常に時計選びの重要ポイントにしています。
皆さんの時計選びの参考になれば嬉しいです!
以下の動画で、今回の内容を映像でさらに分かりやすく解説しています。
腕時計の情報を独自目線で分かりやすく発信しているので、チャンネル登録よろしくお願いします!
ではまた!ありがとうございました。