腕時計を買う人はたくさんいても、組み立てたことのある人は世界を見渡してもそうは居ないだろう。
そんな現状に、一石を投じる時計ブランドが日本の愛知県に誕生した。
その名も、JUNZEN。
今回、JUNZENが世に送る初めてのプロダクト”AKATSUKI”を試す機会を得たので、本音でレビューしていく。
Makuake先行販売ページ: https://www.makuake.com/project/junzen/
まずAKATSUKIを購入すると送られてくるのが、このツールロールだ。
こちらは愛知県の三河木綿というブランドのもので、刺し子織と呼ばれる伝統技法で作られており、柔道着に使用されるなど軽くて強靭な強さを誇る。
触り心地はさらさらと気持ちよく、上質さが五感を通して伝わってくる質実剛健な作りだ。
立ち上げ直後のマイクロブランドはどうしてもコストを抑えるために、こういった直接的に時計と関係ないところを安物に抑えがちだが、ここに手抜きがない点が素晴らしい。
日本の中小企業を応援したい、日本製にとことんこだわりたいというJUNZENの創業の想いが伝わってくる。
このツールロールを開いてみると、時計の組み立てに必要な工具がピシッと綺麗に並び、整理整頓にうるさい私にとっても視覚的にとても気持ちいい。
同梱されている工具はたくさんあるが、特に重要なツールは次の3つである。
1. ドライバー2本
2. ピンセット
3. 剣押し
これら3つの工具は、日本の明工舎製作所という有名な時計の工具メーカーのもの。
なお、それ以外の工具についてはコストを抑えるため輸入品にしたとのことだが、決して不足はない。
むしろきちんと説明してくれることに好感が持てる。
次に、時計のパーツ類をこだわりポイントと共に見てみよう。
1. ムーブメント: Miyota Cal.9039 (Miyotaが他者へ供給するムーブメントで最上位の機種)
2. ケース(SUS316L製、削り出し。風防は日本製のサファイヤクリスタル)
3. ケースバック(シースルー)
4. 文字盤(ブルーorシルバー)
5. レザーベルト(表面は栃木レザー、裏面は防臭抗菌の人工レザー)
6. その他細かなパーツ類
となっており、相当にコストを掛けてこだわったパーツが並んでいることが分かる。
なお、極力日本製にこだわったが、どうしても日本製を見つけられなかったというゴムのパッキン類、レザーベルトの裏材、尾錠は輸入品となっているそうだ。
つまり、この時計を構成する98%くらいは日本製と言えよう(筆者的にはもう純日本製と言ってしまっても良いような気がしてしまうが。笑)
前置きが長くなってしまったが、さっそく説明書を見ながら時計を組み立てていく。
筆者は時計を買うことはよくあるが、時計を組み立てるのは初めての経験なので、ちゃんと組み立てられるか少しの不安と緊張感がありつつも、ワクワク楽しみだ。
まずは、ムーブメントのサイドについている2つのネジを、ドライバーを使って3回転ほど緩める。
文字にすると何ということもない作業なのだが、実際に自分でやるとなると、その難しさに驚いた。
ムーブメントはどのようにして持つのか?寝かせてやるのか立ててやるのか?ドライバーの持ち方はどうするのか?など、様々な思考が巡ってくる。
今まで時計やムーブメントはたくさん見てきたが、実際に自分で手に触れると、考えることがたくさんのだと初手でいきなり気づかされた。
続いて、文字盤固定用リングを取り付け、文字盤をムーブメントの上に乗せる作業だ。
文字盤固定用リングを取り付ける時にピンセットを使ったのだが、このピンセットの質感の高さに驚いた。
先端がシュッと鋭利に尖っていて、思いのままに操りやすい。しかもノンマグネティックになっているようで、時計のパーツを磁気帯びさせる心配がないのだ。
さすが日本製。
日本人はあまり気が付かないかもしれないが、自国にこうした優れたメーカーがたくさんあるのは世界的に見れば非常に稀で恵まれている。
普段海外で仕事をしている筆者にとって、改めて日本のモノづくりの凄みを感じ、何だか誇らしさを感じた瞬間だった。
文字盤はブルーとシルバーの2種類からどちらか選べるが、今回筆者はブルー文字盤を選んだ。
文字盤中央は鮮やかなブルーで、外周側は黒くグラデーションになっており非常に美しい。
このボカシ加工は相当こだわって作ったことが伺える。
アプライドのインデックスも立体的でキラキラと煌めき、非常に綺麗だ。
文字盤を取り付けると、一気に時計らしくなった気がしてとても嬉しい(実際にはまだ完成度30%くらいなのだが。笑)
続いて、針を時針→分針→秒針の順に取り付けていく。
実は今回の一連の作業を通して最も苦戦したのが、この針の取り付けだった。
特に秒針は非常に細やかな調整が必要で、針を平行に取り付けられずに何度かやり直した。
それだけに秒針を取り付けて、無事に動き出し文字盤を元気よく駆け回った時は感動した。
何ということのない、時計の基本中の基本の動きなのだが、自分で組み立てたものの心臓が動き出したような気がしたのだ。
次に、リューズを引き抜いてムーブメントをケースに収める。そしてまたリューズを差し込み、ケースバックを取り付ける。
詳しい作業工程はここでは割愛させて頂くが、ムーブメントをケースに収めてから無事ムーブメントが駆動し始めたときはホッと一安心した(リューズを引き抜いてまた差し込むというのはドキドキした)。
最後にレザーベルトを取り付ける。
このレザーベルトは工具なしで取り付けられる仕様になっており、難なく取り付けることができた。
これで晴れてAKATSUKIの完成である。
全部でトータル2時間ほどを要した。
抱いた率直な感想としては、「想像以上にガチである」ということ。
組み立て式というと、3ステップ程でちゃちゃっと完成できるイメージが、本作品はそんな物ではない。
かと言って難しすぎると言うほどでもなく、大人が十分に楽しめる難易度であると感じた。
完成した時計は、バラバラの状態からは想像できないほどカッコよく美しい。
自分の子が可愛くない親などいない様に、自分で組み立てた時計はより一層の愛着を持てる。
その補正を加味しても、純粋に時計として素晴らしいクオリティを持っているのは嬉しい。
直径38mm、ケース厚10mmというサイズ感は、腕周り15.5cmの筆者の腕にはスウィートスポットであり大好きなサイズ感だ。
ノンデイトの文字盤は上下左右シンメトリーで心地よく、美しいボカシ加工のグラデーションが存分に楽しめる。
価格感が出やすい、針とインデックスはチープ感は皆無で立体感があり美しく煌めく。8万円台という本製品だが、お値段以上の高級感が漂う。
削り出しのケースもオーソドックスな形で使いやすい。ヘアライン加工とポリッシュ加工の使い分けも良く、横から見た時のラグの湾曲は美しいプロポーションだ。
ケースバックはシースルーで、自分で組み立てたムーブメントが見えるのも嬉しい。
栃木レザーのベルトも完成したては硬いのだが、おそらく腕馴染みも良く仕上がっていくのだろう。
唯一、輸入品となってしまった尾錠だけは少しクオリティが落ちると感じるが、価格を考えれば十分納得のいく範囲ではある。
どうしても気になる人は社外品を買って付け替えて対応することも可能だろう。
総じて、8万円台という価格でこのクオリティの時計が手に入るばかりでなく、高品質な工具やツールロール、そして時計を組み立てるという体験まで付いてくるのはかなりお得感があると感じた。
時計初心者はもちろん、時計玄人でも十分に楽しめ、そして満足できるクオリティに仕上がっていると思う。
時計を組み立てたという経験があるのと無いのでは、また違った時計観を得られるはずである。
ぜひ一度、手に取ってみてほしい。
Makuake先行販売ページ: https://www.makuake.com/project/junzen/
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