はい皆さんこんにちは~。腕時計のある人生、RYです。
前回の動画では、人気時計ブランドのオーバーホールの基本料金と特徴についてお話させていただきました。
その中で、所属グループによって方針が変わってくると少しお話ししました。
前回の動画↓ (意外にも過去イチで伸びています)。
でも時計ブランドの所属グループ???なにそれ???と良くわからない方も少なからずいらっしゃると思います。
また、以前いただいたコメントでもグループについて取り上げてほしい!というコメントを頂きました。
ちなみに、このグループのことを正式には「コングロマリット」と言いますので、今後はコングロマリットと呼ばせて頂きます。
そこで、今回は「時計界に君臨する三大派閥の特徴」について話していこうと思います!
今回の内容を5つに分けると、
- 時計界のコングロマリット概要と勢力
- スウォッチグループの歴史と特徴
- リシュモングループの歴史と特徴
- LVMHの歴史と特徴
- まとめ
腕時計のある人生では、
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さらに時計+αを得られるような動画を目指して作っています。
時計好きはもちろん、時計初心者、時計にまだ興味がないという方も、きっと新しい世界観を得られると思うので、チャンネル登録よろしくお願いいたします!
今回の内容を動画にしてみました↓
それでは行ってみましょう!
目次
1. 時計界のコングロマリット概要と勢力
まずはコチラの図をご覧ください。
これは、時計界のコングロマリットや独立系時計ブランドをまとめた表です。
赤い枠がスウォッチグループ
青い枠がリシュモングループ
緑の枠がLVMHグループ
となっており、時計界の3大コングロマリットととして君臨しています。
そしてオレンジ枠がフォッシルグループ
ピンクの枠がシチズングループ
紫の枠がケリンググループ
黄色い枠は独立系の時計ブランド
黒い枠は、独立時計師アカデミーと呼ばれる、どの企業にも属さず活躍しているトップ中のトップ時計師たちです(いつか動画でまとめます)。
ここに載っていないグループやブランドもありますが、大きなところで言うとこのような陣容になっています。
いかがでしょうか?
私は「え、あのブランドとあのブランド同じグループだったのか」とか「あー、このブランドとこのブランド雰囲気似てるからなんとなくわかる」など意外と発見があって面白かったです。
この表は少し古いですが、Morgan Stanleyによる2017年のスイス時計の売上高の割合を示した表です。
これによると、スウォッチグループが29.1%と売り上げトップ、次いでリシュモングループが19.7%、三位にはロレックスが19.4%、四位がLVMHグループの7.9%となっています。
3大コングロマリットと、ロレックスでスイス時計の4分の3以上売り上げていることが分かります。
いかに3大コングロマリットが、そしてロレックスが強いかが読み取れますね。
そしてこちらは、2019年のレポートで、個別のブランドの売り上げを表しています。
上位10社の内訳は…
- ロレックス: 独立系
- オメガ: スウォッチグループ
- ロンジン: スウォッチグループ
- パテック・フィリップ: 独立系
- カルティエ: リシュモングループ
- オーデマ・ピゲ: 独立系
- ティソ: スウォッチグループ
- タグホイヤー: LVMHグループ
- IWC: リシュモングループ
- ジャガールクルト: リシュモングループ
となっています。
こう見ると、スウォッチグループがやはり強く、独立系もさすがに地力があるなという感じがします。
個人的には、リシュモングループがもっと入っていると思っていたので意外でした。
またロンジンが何と三番目に来ていることも意外でした。
で、この2位と3位にオメガとロンジンとなっていることを覚えておいてください。あとでちょろっと出てきます。
2. スウォッチグループの歴史と特徴
1983年に誕生した時計界最大のグループ。
少しその歴史を紐解いていきましょう。
長らく時計産業の中心地として栄えていたスイスでしたが、1969年セイコーがクォーツ時計を発表したことに端を発した「クォーツショック」が起きます。
その後、ニクソンショックによりスイスフランが高騰し、さらにオイルショックも起こります。そうして、かつてはスイスに1800社あった時計関連企業の3分の2は倒産、総従業員は9万人から4万人にまで減少しました。
そこでスイスの時計産業は、とある人物に「どうすればスイス時計産業を救済できるか?」と、コンサルティングを依頼します。
その人物こそが、ニコラス・G・ハイエックです。
彼は1928年生まれのレバノン人です。物理学と教育学を修め、スイス人と結婚しスイスにてハイエック・エンジニアリング社を経営していました。
彼は薄いクォーツムーブメントに着目、それを改良し、1983年、安いプラスチック製のクォーツ式時計を大量生産することに成功します。この時計こそがスウォッチです。
その過程で彼は3つの改革を起こしました。
一つは大規模な設備投資を行い、全自動で時計を作れるようにしたこと。これによって安価に時計が作れるようになりました。
一つはユニークな広告戦略。広告に避けるお金がなかったようで、巨大なスウォッチを作成し、それを看板として各地に取り付け、スイス製であることを強調しました。
一つは品質向上。元々エンジニアリング畑の彼から見れば、時計業界の品質管理はまだまだだったようで、それを徹底的に改善し、消費者満足度向上を図りました。
これを見て面白いなと思ったのは、ハイエックの背景が活きているということです。先述の通り、彼は物理学と教育学を修めているという事で、この2つの学問が見事に活かされているなと個人的には感じました。
時を同じくして、ASUAG社(ロンジン+銀行)とSSIH社(オメガ+銀行)が合併します。
そこに、スウォッチ社とエボーシュSA(ムーブメントやパーツ企業集団。あのETA社もいる)が合併し、SMH(スイス・マイクロ・エレクトロニック時計連合)が誕生します。1986年のことです。
これこそがスウォッチグループの成り立ちです。
注目したいのは、元々スイス時計産業を救済したい!というところから出発しているという点です。
後述しますが、他のグループは、宝飾系、服飾系チームがブランド戦略と買収により時計業界へ参入してきています。
それに対して、スウォッチグループは「スイス時計の、スイス時計による、スイス時計のためのグループ」と言えるかもしれません。
そして面白いことに、先述した売り上げランキング2位オメガ、3位ロンジンでしたが、この二社はまさしくスウォッチグループの立ち上げメンバーなんですよね。なんだか嬉しくなりました(誰や)。
そんなスウォッチグループは、ヒエラルキーを4つの階層に分けています。
- プレステージ&ラグジュアリー: ブレゲ、ブランパン、ジャケドロー、ハリーウィンストン、オメガ、グラスフュッテ・オリジナル
- ハイレンジ: ロンジン、ラドー
- ミドルレンジ: ティソ、ミドー、ハミルトン
- ベーシック: スウォッチ
主にこれらのブランドで構成されています。
そしてスウォッチグループ最大の強みは、最強ムーブメントメーカーのETA社を抱えていることです。
ETA社が、安価な汎用ムーブメントを安定的に各ブランドに供給できることで、スウォッチグループは効率よく時計製造をできているわけです。
ちなみにこのETA社は、他グループのブランドにまでムーブメントを提供しています。
2002年、ハイエック氏は「そのせいで時計ブランドは、単に組み立てとマーケティングによって経営しており、技術的成長がない」として、2006年にはETA社のムーブメントを他のグループに提供しない方針を発表します。
これは、時計業界にとって大ニュースとなりました。なぜなら通常ムーブメントの開発には莫大な費用と時間がかかるからです。もしETA社のムーブメントが得られなければ、経営が危ぶまれるブランドがたくさんいたのです。
しかし、その方針は大きな議論に発展し、ずるずる先延びにされ、最終決定は2020年夏と、今のところされています。つまりまさに今!ですね。大注目です。
そんなスウォッチグループの特徴は、「ブレゲ」から「ティソ」まで、低価格帯からハイエンドのブランドまでバランスよく構成されていることかと思います。
さらに、並行差別もありません。
個人的なイメージは「運動が出来て、誰にでもフレンドリーなクラスの人気者」です。
まとめると…
スウォッチグループの特徴
3. リシュモングループの歴史と特徴
1988年にカルティエを筆頭として誕生したラグジュアリー・グループ。リシュモングループに次いで第2位の売り上げを誇るグループです。
まずは、その歴史を見ていきます。
リシュモングループは、1988年、南アフリカ人の実業家ヨハン・ルパート氏によって、持株会社(ホールディングカンパニー)として誕生します。
設立当初保有していたのは、カルティエとロスマンズ(タバコやビールの会社)、ダンヒルとクロエでした。
そして1993年、ラグジュアリー事業を独立させます。
それからヴァシュロン・コンスタンタン、パネライを傘下に加え、1998年に「リシュモン」となります。
2000年にはジャガールクルト、IWC、ランゲアンドゾーネを買収、2008年にはロジェデュブイも買収し勢力を拡大し続け、現在の地位を築いています。
リシュモングループは、宝飾・時計・レザー・筆記具という4つの事業を持っていますが、売り上げの半分は時計となっているようです。
こう見ると、先ほどのスウォッチグループとは成り立ちが全く異なることがわかります。
スウォッチグループを設立したニコラス・G・ハイエックは、物理学と教育学の背景があり、エンジニアリングと教育によって、スイス時計業界を救済しよう!という成り立ちなのに対して、
リシュモングループを設立したヨハン・ルパートは、経済学と会社法を修めており、ブランド戦略と買収によって成長してきています。
別にどちらが良いというわけではありませんが、両者の歴史を深掘りすると、両グループの雰囲気や戦略に合点が行くことが多く、非常に面白いなあと思います。
リシュモングループのムーブメントメーカーは、「ヴァル・フルリエ」というメーカーがいます。
これは、ETA問題が表面化した後の、2005年、リシュモングループが設立したムーブメントメーカーです。
リシュモングループには、超技術屋集団のジャガールクルトをはじめとするそうそうたる面々が揃っており、ノウハウを共有・蓄積することでムーブメントメーカーを設立します。
そして2014年、このヴァル・フルリエは新工場を立ち上げ、さらに強化に注力します。
この陣頭指揮を執るのは、元カルティエで活躍した「キャロル・フォレスティエ・カザピ」という女性なんですね。
彼女の指揮の下、ヴァル・フルリエは、俗にいう「リシュモン・ムーブメント」を開発します。近年、ボームアンドメルシエで話題になったボーマティックのムーブメントも実はこれが元になっています。
また、リシュモングループで有名なものと言えばSIHH(ジュネーブサロン)がありますよね。
スウォッチグループが主導する、バーゼルワールドが誰でも入れるお祭りのような新作発表会なのに対し、リシュモングループのジュネーブサロンは、招待客など選ばれた者しか入ることができず、落ち着いた豪華な雰囲気となっています。
この成り立ちは、1991年、バーゼルワールドに出店していたカルティエが、「ホットドッグ食いながら時計が売れるかッ!!!」と離脱。それに賛同したのが、ピアジェやボームアンドメルシエなどだったそうです。
そうして彼らは、翌年から自分たちでジュネーブサロンを開催し、招待客のみの落ち着いた空間を演出するようになったのです(2020年からはWatches & Wondersと名前を変え、よりオープンなものとなりました)。
いやあ面白いですよね、スウォッチグループとリシュモングループの雰囲気の差がもろに表れているエピソードだと思います。笑
そんなリシュモングループの特徴は、世界五大時計であるヴァシュロン・コンスタンタンやランゲアンドゾーネをはじめとする、超高級一流ブランドが多く集まるグループ。
上品で正統派な時計を作る事を得意としている感じがあります。並行差別もありません。最近、新品の保証期間を8年にするブランドも増えてきていますね。
個人的なイメージは「真面目で成績優秀な優等生。クラスの正統派学級委員長」。
まとめると…
リシュモングループの特徴
4. LVMHグループの歴史と特徴
1987年、ルイ・ヴィトンとモエ・ヘネシー(シャンパンなどの会社)が合併してできたコングロマリット。
1999年、ショーメ、タグホイヤー、ゼニスの買収によって時計業界へ参入します。
さらに2008年にはウブロを、2011年にはブルガリを買収し、現在、売り上げ第4位の地位に付けています。
他の2グループに比べて、ファッションハイブランドが数多く入っています。
そのためか、「ウブロ」「ゼニス」「タグホイヤー」など、前衛的/革新的なデザインのブランドが多い。
他の2グループのような、ムーブメントメーカーを要しておらず、主に外部のデュボア・デュプラからムーブメントの提供を受けることも多いようです。
元々、新作発表はバーゼルワールドにて行っていましたが、2020年、LVMH Watch Weekということで、LVMHグループの時計ブランドのみで新作発表会をドバイで行いました。
ドバイでやるところが、斬新で革命的、アグレッシブなイメージの強いLVMHグループらしいですね。
個人的なイメージは「派手で奇抜なファッションで目立つ、クラスのファッション番長」。
まとめると…
LVMHグループの特徴
5. まとめ
いかがだったでしょうか?
今日は3大コングロマリットについてお話させていただきました。
もう一度おさらいすると、
時計界の三大グループのまとめ
こんなところかなと思います。
それぞれのグループの歴史を紐解くと、それぞれの戦略や特徴、雰囲気に合点が行きますね。やっぱり面白いと改めて思いました。
時計を購入するにあたり、直接的にはあまり考慮しないかと思いますが、参考程度に頭の片隅に入れておいて頂ければ参考になるかと思います。
今後、独立時計師アカデミーや独立ブランドの特集などもやっていきたいなと思いますので、ぜひチャンネル登録・高評価しておいてもらえればなと思います!
今回の内容が皆さんの時計選びの参考になれば幸いです。
ブログの内容をより分かりやすく動画にしてみました↓
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それではまた!ありがとうございました!