『ドレスウォッチって何?』『選ぶときのポイントは?』『おすすめモデルは?』
こんな疑問をお持ちではないでしょうか?
そんな疑問を解決するため、本記事は【ドレスウォッチとは何なのか?選ぶときのポイント4つ、おすすめモデルベスト10】を紹介します。
この1記事で、ドレスウォッチの全てを網羅的に学ぶことができます。
この記事を書いている僕は、腕時計愛好歴4年、有名雑誌の時計レビュー企画で1000通の中から大賞に選ばれたり、腕時計コンサルタントとして一人ひとりにぴったりの腕時計を見つけるお手伝いをしています。
僕は今でこそ、大の時計好きですが、初めの頃は「ドレスウォッチって何?」「どんなモデルがあるの?」とわからないことだらけでした。
そこから色々と調べて、今ではドレスウォッチの特徴や、選ぶときのポイント、おすすめモデルまで選べるまでに至りました。
この記事では、私のドレスウォッチに関する知識をぎゅっとまとめたので、参考になれば嬉しいです。
目次
1. ドレスウォッチとは?
1-1. 特徴
とにかくシンプルで薄く、上品で正統派な時計。無駄な機能は一切なく、時間がわかるのみ。
シンプルであるほど、高貴とされ、日付表示や秒針がないものある。
逆に言えば、日付や秒を気にしなくても良いくらいの層が買い求める時計ともいえる。
基本的にフォーマルな装いに合わせるため、袖に下に入るよう薄く作られている。
そのため、ムーブメントを薄くできる手巻き式が他のジャンルに比べて多い。
また、プラチナや金など、高価な貴金属で作られているものも多い。
これらはステンレススチールと比べて、柔らかい金属であるため、傷がつきやすい。薄さと相まって、衝撃に弱いので、ラフに使うのは最も避けるべきジャンルでもある。
逆に言えば、ドレスウォッチを長く綺麗に維持することができるというのは、それだけ気を配ることができる、ものを大切に使う事ができるということを暗に示すとも言える。
1-2. 個人的所感
ドレスウォッチは、数ある時計のジャンルの中で、最もシンプルであり、時計の基本形でありながら、最もチョイスが難しいジャンルであると私は思っています。
いや、むしろ余計な機能が無く、極めてシンプルがゆえに審美眼が試され、選択が難しいのかもしれません。
だからこそ、さらりとドレスウォッチを着けこなすことができれば、品とセンスの良さを静かに物語ることができると思います。
ドレスウォッチはタキシードやフォーマルスーツなど、格式の高い装いをメインターゲットに置いています。
そしてフォーマルウェアには、自由なカジュアルウェアとは違い、靴のつま先から、髪の毛の先端にまで、着こなしの基本ルールやマナーが存在しています。
したがって、そういったルールやマナー、さらに言えば立ち振る舞いまでセットで出来て、初めてドレスウォッチを付けこなす事ができると思います。
しかし厄介な事に、着けるドレスウォッチのブランドの格が高ければ高いほど、求められる総合力のレベルは高くなります。
時計だけ立派なブランドでも、マナーや着こなし、立ち振る舞いがついてきていなければ、時計だけが浮いてしまうことになりかねません。
そういった意味において、「自分が試される時計」と言えるかもしれません。
しかし逆に言えば、「自分を高めてくれる存在」でもあります。
初めは浮いていても、時計に釣り合うように自分を磨き、次第に本当の意味で自分のものとなる。そして自分が目指した自分の姿に近づいていく。
そんな使い方ができるのもドレスウォッチの魅力だと思います。
ドレスウォッチはどんな服に似合うのか気になる方は、以下の記事もおすすめです。
2. ドレスウォッチを選ぶときの4つのポイント
2-1. 素材
ドレスウォッチの大きな特徴の一つに、使われている金属の種類が多いことが上げられます。
ダイバーやパイロット、その他スポーツウォッチが頑丈さを求めて、ステンレススチールを使います。
それに対して、ドレスウォッチはエレガントさを求める為、格の高いブランドではプラチナや金などの貴金属を用いることが多いです。
これらの貴金属は、やわらかく優美な上品さがある一方で、傷つきやすいため、価格の高さと相まって、かなり上級者向けとなるでしょう。
それこそ、”あがりの一本”として目標にしている方も多いです。
初めのうちは、ステンレススチールのドレスウォッチがおすすめです。
2-2. ムーブメント
ドレスウォッチのもう一つの特徴として、手巻き式が多いと言う点です。
これは、自動巻き式に比べて、ドレスウォッチを薄く作る事ができるというメリットがある反面、衝撃に弱くなると言うデメリットもあります。
一方で、部品数が自動巻きに比べて少ないため、メンテナンスや修理はしやすいため、長期での使用は良いとされています。
手巻き式は定期的に自分でゼンマイを巻き上げる手間がかかるため、時計愛好家にファンが多いのですが、実用性に劣るのも事実です。
毎日使うorまだ機械式時計歴が浅いという人は自動巻き。
たまにしか使わないor機械式時計歴が深いという人には手巻き式がおすすめだと思います。
2-3. サイズ
これは、ドレスウォッチに限らず、すべての時計に言えることですが、サイズ選びに気を付けましょう。
スーツと同様、いくら素材やブランドが良くても、サイズが合っていないだけで、台無しになってしまいます。
ドレスウォッチはそのシンプルさがゆえに、文字盤の構成要素が少なく、間延びして見えます。そのため、サイズはいつもよりも小さめ、かつ現代基準で考えれば、ケース径40mm以内が良いでしょう。
個人的にベストバランスは、ケース径38mm~33mmくらいだと思っています。
また、長袖やシャツに収まるよう、厚さも要チェックです。厚さ11mm以下であればまず大丈夫だと思います。
2-4. 文字盤
2-4-1. 色
基本的には、白かクリームかかった白色が定番です。
シルバーもOKですが、ややビジネスライクになると個人的には感じます。ビジネスメインでは白よりシルバーの方が、個人的には好きです。
黒や濃紺もありますが、これは超上級者だと思います。
ドレスウォッチの中でも、”イブニングウォッチ”や”ディナーウォッチ”として、夜の会食やパーティにディナージャケットやブラックタイに合わせると、最高にかっこいいです。
ちょうど、カフリンクスを昼は白のオニキス、夜は黒のオニキスに使い分けるのと同様です
しかし、時計まで昼と夜で使い分けができる人って日本にどのくらいいるのでしょうか…。
2-4-2. インデックス
ローマ数字が最も高貴であるとされ、それとほぼ同等にバーインデックス、アラビア数字はほんの少しカジュアル目とされています。
しかし、ここは気に入ったもので良いと思います。
たまに宝石が埋め込まれているものがありますが、紳士の正統派スタイルからは離れてしまい、着こなしがかなり難しいので、ファッションに相当の自信がある方か、王族でもない限り避けた方がいいでしょう。
2-4-3. 針
針は少ないほど高貴とされています。
したがって、時針と分針だけの2針タイプがもっとも高貴、それとほぼ同等レベルで2針+スモールセコンド(文字盤の下の方に小さく秒針があるタイプ)、次いで3針タイプとなります。
パワーリザーブや日付表示は出来るだけ無い、シンプルなものが王道です。
ただし、ムーンフェイズ(月齢表示)はあっても個人的には良いと思います。
番外. ブランドの格
“時計とはヒエラルキーを楽しむものでもある”
と、ある方が言っていましたが、確かにその側面があることは個人的に同意です。
ただ、すべてのジャンルがそうかと言われると、難しいところです。
例えば、ダイバーズウォッチやクロノグラフでは、ブランドの歴史が浅かったり、安価な物であったりしても、上位ブランド以上のスペックを備えるものも多くあります。
すなわち、スポーツウォッチであれば、スペックで勝負できるわけです。
しかし、ドレスウォッチの世界では、ただ時間を表示するのみ。
たしかに、パワーリザーブの長さや、精度などのスペックはありますが、そのような事を気にする時計でもなければ、購入層でもありません。
したがって、ドレスウォッチはブランドの下克上が起こりにくく、ブランドの格=ヒエラルキーが如実に表れるジャンルであると私は思っています。
では、その格は何で決まるか?と言うと、今まで培ってきた歴史と信頼そしてであると私は思います。
ゆえに、新興ブランドが如何に高価格帯の時計を売り出していても、それはスポーツウォッチのジャンルに多く、その所以は超絶ギミックや素材によるものが多いです。
高価格のシンプルなドレスウォッチは出せないでしょう(出せても売れない可能性高し)。
話がそれました。ブランドの格を気にするかどうかは、全く個人の自由なので気にしなくても大丈夫です。事実、そういう面もごくわずかにある程度に考えておけばOKだと思います。
もしブランドの格付けを知りたい方は、この記事を読めばおおよその感覚が掴めます。
3. ドレスウォッチ おすすめベスト10
第1位: パテックフィリップ 「カラトラバ」
栄えあるドレスウォッチおすすめ第一位は、全ての時計ブランドの頂点と言われる、パテックフィリップから「カラトラバ」を選びたいと思います。
カラトラバが誕生したのは1932年。
デザインは機能により決定されるという、ドイツのバウハウス哲学を反映して、時計学者にデザインされました。
丸型時計の模範と評され、現代まで大きなデザイン変更は無く、永世定番として、世の紳士の憧れとなっています。
個人的にすごいなと思うのは、1900年代~1930年代前半の時計は、アール・デコの影響か、レクタンギュラーの時計(長方形の時計)の全盛期に、丸型の時計で傑作になっていることです。
今でこそ丸形の時計が主流ですが、当時は、カルティエのサントスやタンク、ジャガールクルトのレベルソやオメガのマリーンなど、レクタンギュラーの名作と言われる時計が数多く登場している時代です。
アール・デコの最盛期にあって、バウハウスという選択がすごいと思います。
数あるカラトラバの中でも、Ref. 5196は、初代カラトラバ Ref.96の流れを汲み、いわば正当な血筋にあると言えるでしょう。
サイズはかつての30mmから現代に合わせて37mmと大幅にサイズアップされていますが、今日においてはベストサイズだと感じます。
手巻き式のため、7.2mmと極めて薄く、シャツに干渉することなく、袖口に収まるのも素晴らしいです。
私もいつかは…と憧れている時計で、実物を見に行った事があります(買える訳はありませんが汗)。
一見、至極シンプルなのですが、ただモノならぬオーラがひしひしと伝わってきました。
漢字で例えるなら「光」でしょうか。邪悪なものを寄せ付けない、聖なる光を放っているかのような、そんなオーラに纏われているように感じました。
ちなみに、かつて似たようなオーラを感じたことがありました。それは天皇皇后両陛下を目の当たりにした時です。
特に、美智子様はダイヤモンドダストが舞っているかのような、圧倒的な純白の光のオーラを感じました。後にも先にも、人のオーラが目に見えたのはあの時だけです。
話が逸れました。
ちなみに、”カラトラバ”という名前は、1100年代に、外敵の襲撃から国を守ったスペイン騎士団の”カラトラバ十字”から来ており、パテックフィリップのロゴにもなっているほどで、由緒正しき出生があります。
パテックフィリップには、数々の名品がありますが、その中でも自社のブランドロゴの名前を冠するカラトラバこそ、同社の顔とも言えるでしょう。
第2位: ランゲアンドゾーネ 「サクソニア」
世界五大時計の一翼を担う、ドイツの至宝ランゲアンドゾーネから、「サクソニア」を第2位に選びました。
ランゲアンドゾーネの創業の物語が個人的に好きなので、簡単に紹介させていただきます。
ランゲアンドゾーネは1845年、アドルフ・ランゲによりドイツのザクセン州グラスヒュッテの村で創業されました。
元々宮廷時計師の弟子であったランゲは、時計修行の旅を終えた後、資源枯渇などで貧困に苦しんでいたグラスヒュッテを救う為、時計産業による村おこしをはじめます。
”ランゲとその息子たち”によって、ドイツ時計の聖地へと変貌していったのです。
ランゲアンドゾーネは、第二次世界大戦から軍需工場として接収され、空爆により焼失してしまうのですが、ベルリンの壁崩壊後、4代目ウォルター・ランゲによって見事に復興を果たします。
そして、復活から極僅かの期間で、世界五大時計に数えられるほどの地位にまで上り詰めています。
そんなランゲアンドゾーネの特徴は、”美しすぎるムーブメントの磨き込み”と、全てのモデルで実施している”二度組み”です。
この二度組みは、一度時計を組上げて、検査したのちに、またばらしてパーツを一から磨き上げて、また組みなおすという非常に手間のかかる作業です。
超一流ブランドでも、特別なモデルにしかしていないこの手法を、なんと全ての時計で実施しています。
それゆえに、年間の生産本数がとても少なくなってしまうのですが、一切の妥協を許さず、理想の時計を目指し続けるのがランゲアンドゾーネなのです。
唯一、パテックフィリップと双璧を成す事ができるブランドとの評される事に違わず、外装も内装も圧巻の美しさとオーラを宿しています。
さて、このサクソニアは、1991年ブランドが再興した際に、発表した4つのモデルのうちの一つです。「サクソニア」とは、同社の故郷「ザクセン州」の呼び名であり、いかに大切なモデルであるかが読み取れます。
同社の中で、もっともシンプルなモデルであり、価格的に入門機的な立ち位置ですが、その作り込みと美しさは、決して入門機のそれではありません。
実際、私も手に取ってみましたが、シンプルでありながら繊細な作り込みが随所に感じられる時計です。
特に裏から見えるムーブメントは、極めて美しく、ずっと眺めていたいほど。手に巻かせてもらった時は、ものすごい多幸感に包まれました。
時計本体はもちろん、ランゲアンドゾーネの精神や歴史、クラフトマンシップも含めて非常にオススメです。
第3位: ヴァシュロン・コンスタンタン 「フィフティシックス」
1755年創業以来、一度も途切れることなく時計を作り続けている世界最古の時計ブランドから、「フィフティシックス」をおすすめしたいと思います。
フィフティシックスは、同社が1956年に発表したRef.6037にインスピレーションを得て、現代的なデザインを取込みブラッシュアップされたモデルです。
シルバー文字盤は内円と外円で異なる仕上げを施しており、多彩な表情を見せてくれるので飽きることがありません。
また、インデックスはアラビア数字とバトン型のバーインデックスを組み合わせており、ドレッシーでありながら、カジュアルにも相性が良く、絶妙なバランスを保っています。
そのおかげで、フォーマルからカジュアル着まで、幅広くカバーしてくれる頼もしい相棒となるでしょう。
事実、ヴァシュロンは同モデルを「デイリーラグジュアリー」と位置付けており、日常使いを前提としてデザインしています。
裏面は、シースルーになっており、マルタ十字がオープンワークされたK22ローターの美しい自動巻きキャリバー1326を見る事が出来ます。
私も、実物を店舗で見させてもらったのですが、あまりの美しさとカッコよさに終始「うわぁ…うっっわぁ…」を連呼していました(気持ち悪い)。
その時の動画を撮っていたのですが、自分の声が気持ち悪過ぎたのでお蔵入りにしています。笑
正直、画像ではそこまで期待していなかったのですが、実物のオーラは物凄く、さすが世界三大時計と言った出来です。
しかも、このクラスの時計としては破格の値段で、かなりの衝撃でした。コストパフォーマンスが素晴らしく、予約が必要なほど、世界中で売れており、間違いなくおすすめできる一本です。
第4位: グランドセイコー 「SBGW231」
我らが日本の職人魂グランドセイコーから「SBGW231」を第4位に選出しました。
TOP3が雲上時計級であることを考えると、この位置が如何にすごいかがわかります。
選出理由は、ずばり”究極の磨き”です。
グランドセイコーの時計は、針やインデックス、時計の本体や尾錠に至るまで磨きが凄まじく、室内の照明下でさえ、凛とした光を放ちます。
これをグランドセイコーは”光を研ぐ”と表現していますが、まさに言い得て妙です。
“研ぐ”という言葉から、私が真っ先に連想するのは日本刀ですが、まさに美術館に展示されている日本刀のようなオーラと輝きを放っています。
私は、オーラのある時計をしている人が居ると、その時計につい目が釘付けになってしまうのですが(悪い癖)、釘付けになってしまう率が最も高いのがグランドセイコーです。
グランドセイコーは、「最高の普通を作る」という理念を掲げているのですが、普通、つまり基本を極めると、ここまで輝く美しい時計が作ることが出来るのかと感動さえしてしまいます。
一方で、グランドセイコーの時計は分厚いことが多く、もう少し薄ければなあと感じる事もあるのですが、このSBGW231はケース直径37.3mm、厚さ11.6mmと、ドレスウォッチとして着けやすいサイズ感であることも評価ポイントです。
ムーブメントは手巻きということもあり、クラシカルな雰囲気と相まって、年配の方にも良く似合うので、まさに一生付き合えるおすすめの時計です。
第5位: ジャガールクルト 「マスターコントロール」
超絶技術屋集団のジャガールクルトから、「マスターコントロール」を第5位に選出しました。
ジャガールクルトと言えば、1833年の創業以来、数々の発明や特許、1000種類以上のムーブメントを製造し、あの世界三大時計の全てにムーブメントを供給していた程の真のマニファクチュールです。
その技術力の高さ故、時計だけではなく、「時計製造のための機械」における発明を繰り広げ、ミクロン単位を測定できる史上初の計器「ミリオノメーター」なども発明しています。
さらに発想も良い意味で変態的で、室内の気圧差だけで半永久的に動き続ける時計や、クオーツ時計のようにステップ運針する機械式時計など、他のメーカーには到底できない離れ業も持ち合わせています。
そんなジャガールクルトのマスターコントロールは、一見シンプルな丸型時計ですが、そこはジャガールクルト。自社独自の「マスター1000時間コントロール」という規格を通してきています。
これは、その名の通り、完成した時計の品質検査(様々な状況下での精度検査、気温や気圧への耐性、耐磁性など)を1000時間にも渡って行う、まさに地獄の1000本ノックを実施して、合格したモノのみを出品しているのです。
まさに究極の品質管理。頼れる相棒になること間違いありません。
このランキングの他の時計ほど、煌びやかさはありませんが、”機械”としての時計に真摯に取り組む姿勢や、”能ある鷹は爪を隠す”感に非常に好感が持てます。
ビジネスパーソンがジャガールクルトをしていたら、私は無条件に信頼してしまいます。笑
時計愛好家のファンが一段と多いジャガールクルト。時計の深みへと誘ってくれる一本です。
第6位: カルティエ 「タンク」
第5位のジャガールクルトとは、全く正反対の路線であるカルティエ。
「宝石の王、王の宝石」と謳われる、まさに優雅でエレガンスの王道のカルティエから「タンク」を選出しました。
しかし実は、1904年に世界で初めてメンズ時計を作った、由緒正しき時計ブランドであり、リシュモングループの盟主も務めています。
タンクは1917年、大量の機械兵器がはじめて導入された第一次世界大戦直後に誕生しました。
終戦を決定づけ、再びヨーロッパに平穏な日々をもたらした平和の象徴である戦車=タンクをモチーフにしたことから、「タンク」と名付けられました。
タンクでぱっと目を引くのは、その直線を基調とした独特の造形かと思います。
これは、”アール・デコ”と呼ばれる新しい芸術の特徴です。
“アール・デコは1925年のパリ「アール・デコ展」(現代装飾美術・産業美術国際博覧会)を機に開花し、「世界で初めて世界を一周した芸術」などともいわれる、世界中を席巻した芸術です。
そしてそのアール・デコは、実はカルティエの創案した様式であり、またアール・デコの主役はカルティエでした。
ところがそれ以前に、カルティエは「タンク」で既にそれを体現していたのです。
「タンク」の幾何学的な直線性を強調したかたちや、白と黒の対比といった、独特のデザインコードは、そのままアール・デコのもの。
すなわち「タンク」は、カルティエが生み出したアール・デコの最初期の代表作のひとつ。
時計という以前に、全デザイン史のなかで語られるべき、歴史的芸術作品であるのです。” (引用: 雑誌Leon)
このような背景もあってか、イヴ・サンローランをはじめとする歴史的に著名なアーティストやデザイナー、俳優などがこぞって愛用しています。
私のおすすめは、アンティークのタンクです。現行品ももちろん素晴らしいのですが、まだ製造機械の精度がそれほど高くなかった時代のタンクは、なんとも形容し難い、独特の妖艶なオーラを醸し出しています。
また時代が古いほど、時計の主流サイズは小さくなるので、小ぶりで付けこなすのも、とてもクラシカルでエレガントだと思います。
前述のジャガールクルトが”機械”としての時計をとことん追求したモノだとしたら、このカルティエのタンクは、”芸術”としての時計を表すようなモノに感じます。
変化スピードの目まぐるしい現代人に「もっとラクにいこう」と語りかけてくるかのような一本です。
第7位: ノモス グラスヒュッテ 「タンジェント」
ノモス グラスヒュッテはドイツ時計の聖地グラスヒュッテに1906年に誕生したブランドです。
それから第一次世界大戦・第二次世界大戦という戦火に飲み込まれ、廃業を余儀なくされていましたが、1992年東西ドイツ統合の後に、再興を果たしました。
ノモスの時計は、華美な装飾を廃し合理的で機能的なデザインを追求した「バウハウス」の精神を継承・発展させていることから「バウハウス ウォッチ」と呼ばれる事も多々あります。
バウハウス: ドイツの伝説のデザイン学校。1919年~1933年というわずか14年という短い活動期間でありながら、世界の芸術・建築に多大な影響を与えた
そんなノモスの時計の中でも一番人気を誇るのが、この「タンジェント」。
極めてミニマルでシンプルなそのデザインからは、なにか清々しさすらも感じます。
スイスでも日本でもない、ドイツの時計という少し外した感じでありながら、モノの本質を捉えているような、センスの良さも感じさせてくれる時計だと私は思います。
サイズやカラー展開も豊富で、嬉しいポイントです。
特に、厚さはたったの6.2mmと圧倒的な薄さを実現しており、着ける事を忘れてしまいそうなほど軽く、女性にもおすすめできる逸品です。
また広告や作業効率も一切の無駄を排し、企業努力によってリーズナブルな価格に抑えられているのも素晴らしい特徴です。
フォーマルからカジュアルまで幅広くカバーできる雰囲気も備えており、初めての一本でもおすすめします。
事実、この時計は世界で数々の賞を獲得していますが、納得です。
第8位: ボームアンドメルシェ 「クリフトン ボーマティック」
ボームアンドメルシェは、1830年創業の老舗ブランド。
かつて国際コンクールなどで金賞を取るなど、優れた成績を残し、リシュモングループに加わっています。
個人的なイメージとしては、豊富な歴史と確かな実績を併せ持ちながらも、認知度は低めの古豪ブランドというものでした。
そんなボームアンドメルシェから、2018年に発表された「クリフトン ボーマティック」は目を見張る出来栄えだと感じました。
まず、そのサイズは直径40mmと日本人の腕に合いやすく、厚さは10.3mm台とスマートなプロポーションです。
スペック面はさらに驚異的です。
パワーリザーブはなんと5日間…!一般的な時計は48時間程度であるのに対して、2.5倍です。つまり、連休の間放置しても時刻を刻み続け、サッと付けて出勤することが出来るのです。
精度はクロノメーター規格のものも選べるようになっており、申し分ありません。
さらに耐磁性も高く、日常生活で磁気帯びの心配が少なくなりました。
取り回しのしやすいサイズ、長いパワーリザーブに高精度、さらに耐磁性も備わっているクリフトン ボーマティック。
一見すると華が無いような印象ですが、至れり尽くせりの実用性は魅力的です。”花より団子”な方に、おすすめしたい一本です。
第9位: ハミルトン 「イントラマティック」
1892年アメリカのペンシルバニアに創業されたハミルトン。
創業翌年に作られた、ブロードウェイリミテッドという懐中時計が、時間の正確さを求めていた鉄道会社に採用され、それがステップとなり鉄道時計メーカーとして地位を確立していきました。
第二次世界大戦中には、全ての生産ラインを軍用時計に切り替え、計100万個以上の軍用時計を生産し、アメリカ軍に重用されました。
1950年代に世界初の電池式腕時計、デザイン的にも卓越したベンチュラを発表するなど技術力にも定評があるだけでなく、500作品以上のハリウッド映画にも時計を供給しています。
まさにアメリカの開拓から発展まで、国と共に歩んできた時計ブランドです。
現在は、スイスに拠点を移し、さらに自社製品に磨きをかけています。
そんなハミルトンから、アメリカンクラシックシリーズの「イントラマティック」を選出しました。
1960年に誕生したデザインをそのままに復刻したモデルということもあり、どこかレトロで柔らかい雰囲気が魅力的です。
自動巻きでありながら、サイズは直径38mm、厚さ10mmと、ドレスウォッチとして素晴らしいプロポーションを維持している点も、現代において貴重な存在です。
シルバーの文字盤にはサンレイ加工が施されていて、光の加減で表情が変化するので飽きがきにくいと思います。
また、シルバーということで、ビジネスシーンやシックなきれい目カジュアル服にも相性抜群です。
レトロな雰囲気が好きな方やアメリカが好きな方にもおすすめしたい時計です。
第10位: オリエント 「バンビーノ」
前身の東洋時計製作所は1920年、それを受け継いだオリエント時計は1950年の創業。あまり知られていませんが、れっきとした日本のブランドです。
しかも、世界でも数少ないマニュファクチュール(時計のムーブメントを自社一貫製造するメーカー)です。
日本にはセイコー・シチズン・カシオといった超有名ブランドが並びますが、オリエントの時計には独自の雰囲気が漂っており、高いコストパフォーマンスと相まって、世界中にファンがたくさんいます。
個人的には、クルマで言うところの”マツダ”のようなものを感じています。
ビッグブランドではないが、独自のデザインと哲学を持ち、その道を邁進することで、根強いファンを獲得している点などは、そっくりだと思います。
そんなオリエントの中でも特に人気の高いモデル「バンビーノ」を選出しました。
このバンビーノは第1~第4世代までシリーズがあり、好きなデザインを選ぶことができるのですが、ここでは、特に人気の高い第2世代のモデルを紹介したいと思います。
ドーム型の風防と玉ねぎ型のリューズがより一層クラシカルな雰囲気を助長しています。
カラーの選択肢も多いのですが、よりクラシカルさを楽しみたい人はクリーム色の文字盤が良いかと思います。インデックスは植字のローマ数字で、上品さと高級感があります。
これだけの内容でありながら、1,2万円台で買えると言うのは、ちょっと信じられません。スイスのブランドで同じ内容なら、軽く10万円は超えて来るでしょう。
いかにコストパフォーマンスが高いか、そして世界中にファンいる理由がわかります。
低価格なので、初めての一本にもおすすめの時計です。
4. まとめ
いかがだったでしょうか?
今回は、薄くてシンプルなドレスウォッチについてまとめました。
上品なドレスウォッチは、紳士な装いと振舞いをさらに格上げしてくれるでしょう。
素敵な一本に出合う参考になれば幸いです。
以下の動画で、今回の内容を映像で分かりやすく解説してます。
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ではまた!ありがとうございました。